残 暑

(この作品は「逢瀬」の続きです!)

遅れて申し訳ありません、逢瀬の続き(というかアナザーバージョン的な)です、
もしかしたら存在忘れているかもしれませんがwwwww
覚えてたら読んで欲しいです!!←







炎天下

運動部の声

竹刀のぶつかる音

汗を光らせ走る制服

俺の意識は、時々ここじゃないところへ飛んでゆく



空が、太陽が、その向こうの大気が


俺の心を吸い取るみたいに。









―――ガコン!

「!」
目の前の自販機が少し揺れて、アクエリアスがでてきたのを確認して、俺はしゃがんでそれを取った。
俺はペットボトルを手の中でもてあそび、三棟二階にある3年A組を目指して歩き始めた。


「あっちぃ」


7月の終わりの陽射しは、厳しい。
下駄箱周辺にたくさん植えてある桜の木の葉は、もう濃い緑に色を変えている。
それらが落とす影は黒く、濃い。
風がかすかに吹いて、額にうっすら浮いた汗から熱を奪う。


―――ああ、涼しい。


俺はふと腕時計を見やって、ヤバイと思った。
学校から駅までは徒歩15分。
電車の時間は4時45分発。
今、4時10分。


少しいそいで、カバンをとりに行かねばと思った俺だった。





今日は補習がないので、教室には何個かのカバンと、今日出された数学のワークと格闘している2,3人しかいなかった。
俺がスライド式のドアを開けると、そのうち1人が顔を上げてこちらを見た。
「ああ、西崎じゃん」
高田美穂。学年では結構美人といわれているヤツだ。
俺と高田は電車通で、電車の方向も同じなので、クラスが同じになった2年のころからたまにいっしょに帰る仲だ。
「よぉ高田、どーよワークの進み具合は」
俺は手の中に納まっているアクエリアスをいじりながら高田に聞きつつ、自分のカバンがある席へ歩みを進めた。
高田はワークをパタンと閉じ、筆箱をがちゃがちゃと鳴らしながら
「もう終わっちゃった」
と控えめな笑顔で言ったのだ。
やられた。
俺はただただ、そう思った。
今日は一人で帰りたい気分だったのに。
高田は勉強面では結構マジメだから、ワークについての話題を出せば、ワークが終わっていないのを気にして「いっしょに帰ろう」なんて言っては来ないと踏んでいたのだ。
案の定、高田はカバンへワークや筆箱を仕舞いながら「西崎、一緒に帰らない?」と聞いてきた。
もう、こうなると断れない。
ちょっと苦笑いを含んだ笑みを作って、俺は「いいよ」と一言だけ返した。


教室に流れ込む風が、涼しかった。



いつもなら、もうちょっと快く「いいよ」をいえたのにな。
今日はそういう気分じゃなかった。


何でだろうな


空はいつも以上にただただ青く、太陽はぎらぎらしていて、


俺の心を吸い取っていくんだ。





学校から駅への道のりはそれなりに楽しいものだった。というかいつもどおりだった。
高田と何気ない話をして、けらけら笑っていたら、いつの間にか駅についていた。
高田に「西崎よ、今、何時だい?」とふざけ気味に(しかもドヤ顔)聞かれ、ふと腕時計を見ると4時40分を指していた。


電車はすぐに来た。
外が結構暑かったので、クーラーの効いた空間に入れるのでとても嬉しいわけだ。
俺と高田は、会話を続けたまま、ドアが開いた電車に足を踏み入れた。
そして、開いてないほうのドアへもたれかかり、そのまま会話を続けた。
その時――― 何となく視線を感じた。
最初は何とも思わなかったし、気のせいだと思っていたから、スルーしていたが、次の駅までその視線を感じたので、流石に視線の主が気になった。
高田と話している最中に、何気なく場所をうごいて、視線の主を ―――後ろから視線を感じたので、とりあえず主を確認した。
視線の主は、俺のよく知る人だった。


「・・・・・・え」
うつむいて、ipodで曲を聞いているのか、ヘッドフォンをして、本を手にした、セミロングの髪の見慣れた少女。
篠原 涼音だった。



ちょっとビビった。
まさか会うとは思ってなかった。
それにしても表情が暗い。学校で何か、あったのだろうか?



電車は進んでいく、止まることなく、無神経な音を立てて、ガタゴトと。
もうすぐ、高田の最寄り駅に着く。


(早く着けばいいのに)






「えー、○○駅です。御降りのお客様は・・・」
「あ、私そろそろだ」
「だなぁー」
今日も高田との話は弾んだ。
いつもだったらちょっと残念な気持ちで聞く○○駅への到着のアナウンスだが、今日は何でか聴いた瞬間に安堵感に包まれた。
涼音は、まだ下を向いている。


やがて駅に着いた。
プシューという音と共に、ドアが開いた。
いつも以上に、その動きがスローに見えた。
「んじゃ、西崎バイバイ」
お前とは友達だ。それを誇張するようなサッパリした"バイバイ"。
俺も、そのサッパリした"バイバイ"を返すだけ。
「おーバイバイ」
高田は軽やかな足取りで、電車を降りていった。(そりゃあ、あれだけ俺に愚痴はいたら・・・な)
涼音は、なぜかぼんやりした目で高田を見ている。
アイツそんな趣味あったかなぁ、と思いつつ、エナメルを肩から提げて涼音の傍へ歩みを進めてみた。
涼音がさらに下を向いた・・・気がした。
耳が赤いような気もする。 ・・・風邪引いてるのか?



「よっ、涼音」
「・・・・リョウ?」
声をかけると、涼音はやっと顔を上げた。
―――何だ、普通に元気そうじゃん。
安心したおれは、 ―――少し躊躇してから彼女の隣に座った。
何で躊躇したのかは、ちょっと自分でも分からないけど。
涼音は、未だ緊張した面持ちで本をカバンに仕舞っている。
一つ面白いことでも言ってやろうと思い、そういえば自分の親戚が涼音と同じ高校で、「私太いから制服似合わないー!」と嘆いていたのを思い出して
「制服に合ってる ダイエットしなくても」
といってみたら、けらけらと笑ってくれた。





何かが変わっていくような、錯覚。
・・・いや、これは錯覚なんかじゃない。
確実に。俺と、涼音の間で、何かが変わっていく違和感が、ただただ胸を突く。
窓から射す夕日に映された彼女を見て、良い"妹"という感情よりもどろどろして、熱いものが俺の内側から溢れ出て、そのまま、内臓を、皮膚を、全部を突き破って出てきそうになる。
それは、心の臓を介して、全身を駆け巡っている。


これって、何なんだ―――





「次は、△△駅、△△駅です、お降りのお客様は・・・」
「あ、涼音、次の駅だっけ?」
「そうだよー」
俺は口の中で「そっか」という一言を転がしながら、ぼんやりと外を見た。
ただ夕日が眩しい中で、俺はぬるま湯の中にいるような感覚に陥っていた。
落ち着かない。ただそれだけ。
まだ全身に、熱いものが駆け巡る感覚がある。
胸がむかむかするんだ、俺にはその正体が何か、ワカラナイ。
何となく、目が合った。
はじけたように、俺はフイと目を逸らしてしまった。涼音も目を逸らす。
やっぱり昔とは、何かが違う。
でも分からない。
多分これは、頭で考えて分かるものじゃないんだろう。



『えー△△駅です』
「リョウ!」
アナウンスを遮るように、急に涼音が俺の名を呼んだ。
かなりビックリした。普段、涼音はあまり大きな声を出すようなヤツじゃない・・・はずなのに。
周りにいる数人も、驚いたように目を見開いてこちらを見ている。(でもすぐに、全員目線をはずした)
相当感情が高ぶっているみたいだ、俺が落ち着いていないとコイツ暴れる。
「ん?どうした涼音」
俺がそういった瞬間から、涼音の顔に赤みが差した。
赤さはどんどん色味を濃くしていく。
涼音は下を一度向いて、呼吸を一つした後、バッと俺に向き合った。


「わたしっ! ちっちゃい頃からずっと、リョウ・・・涼輔の事が好きだったの!」


血流が、燃え上がった。
頭の中で、はじけ飛んだ。螺子ねじ
一瞬、涼音が何を言ったか分からなかった。
「好き」の一言だけが、後から後から、何度も何度も頭の中で反響する。
俺の頭は、ようやく涼音のいっていた言葉の意味を理解し始め、自分の目が見開いていくのが分かる。紅潮していくのが分かる。
でも冗談だと思った。
きっと、友達に罰ゲームとしてやらされてるんだろう、とか、そんなことを考えている。
「涼音、それは一体何の冗談・・・」「冗談なんかじゃない!」
涼音は真剣に俺を見つめている。
嗚呼。冗談なんかじゃ、ないんだ。
彼女は真剣、だ。
そう思った瞬間ときだった。
唇を、ふさがれた。


歯が当たってしまい、唇を切ってしまったようだ、血の味が口の中に滲んだ。
思わずビックリしたのと、ワイシャツが引っ張られてちょっと息がしづらくて、周りの目が気になって、少し身をよじったが、それ以上抵抗する気にはなれなかった。
何でか、抵抗する気になれなかったんだ。
きっと、電車のアナウンスがなければ、永遠に放してくれないくらい、強く俺のワイシャツを掴んでいる。
息が苦しくて、離れようと思ったけど、涼音は放してくれなかった。
―――でもそれでも良いと思えて。


プシューっ


電車の扉が開いて、涼音は俺から勢いよく遠のいた。
涼音は、真っ赤で、きっと俺も赤いんだろう。
無意識に、口元を手で覆っていた。
涼音はカバンを手にして、勢いよくイスから立ち上がった。
そして言い放つ。
「私! あ、あの彼女さんよりリョウのこと好きなんだからね!覚えといてよ!」
・・・か、彼女?まさか高田の事か?!
凄まじい誤解だ、やべぇ、ああ、涼音が電車から降りてしまう。
彼女じゃない、と言おうと思っていたら
「あ、ちょっ、涼音!!」
涼音は不確かな足取りで、電車から駆け下りてしまった。
何度か転びそうになりながら、彼女は改札に向かっていっていた。
俺は、周りに残っている何人かの好奇の視線に気がつかず、口元を押さえたまま、涼音の去っていったほうを見つめていた、ただ、ぼんやりと。
扉はすぐに閉まり、俺の視線の先には、金属の冷たい扉。
席に座りなおし、向かいの窓の風景を見ていた。
夕日がただ、美しいだけだった。

そして唇に触れる。


キスの熱が、残っていた。




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やっっっっっ・・・と書けたー!!
続きというか、男の子目線ですねぇハイ。

描いてて思ったのが、涼輔ニブ過ぎやろと言う事w
まぁ鈍い子が書きたかったのです。


そして感情の描写を克明に描きたかったのです。全く克明ではないですねwwww
まぁ感情丸出し!って感じを出したかったの・ω・`


ちょっといつもと違う雰囲気を出したかった